こんにちは。
ものづくり補助金への申請となると、とりあえず申請書を作り始める方が少なくありませんが、その前に準備していくべきことがあります。
ものづくり補助金の申請を検討しはじめたら、まずは自社の経営状況を振り返り、公募要領をしっかり確認することが大切です。
こんな方におすすめ
- ものづくり補助金に応募しようかどうか迷っている方
- ものづくり補助金への応募資格があるのかどうかわからない方
- ものづくり補助金に採択される見込みがありそうかどうかを確認しておきたい方
重要
本記事は、執筆(または更新)時点の公募要項の内容に基づいて執筆していますが、今後、公募要項に変更が生じる可能性があります。そのため、ものづくり補助金ポータルサイトで最新情報を確認していただくようお願いします。
記事の信頼性
中小企業診断士として独立し、中小企業の経営支援をしています。
補助金コンサルの経験は12年になります。
2022年7月時点の採択件数は120件以上、採択率は「80%~90%」です。
>> 過去の採択実績はこちら
Twitter(@KeisukeMatsumo7)
申請書作成に取り掛かる前に確認しておくべき7箇条
補助金申請に入る前の事前準備として、確認・検討しておくべきことは以下の7つです。
- 自社の事業計画を振り返ること
- 資金計画を立てること
- 過去2期の経営状況を確認
- 応募資格の確認
- 経費が補助対象になり得るか
- 採択の見込みはありそうか
- 加点を受けられそうかどうか
自社の事業計画を振り返ること
ものづくり補助金の公募要領には、
本事業では、提出いただいた事業計画を外部有識者からなる審査委員会が評価し、より優れた事業提案を採択します。グローバル展開型は特に優れた内容を求めます。
という記載があります。
つまり、採択・不採択を分けるのは「事業計画」の内容だということです。
事業計画書では、
- どんな会社なのか
- 誰に何を売っているのか
- どのような課題があるのか
- 今後、どんな事業展開を目指しているのか
を端的に示す必要があります。
普段から、経営計画や事業計画を作成・更新している企業は、その事業計画を踏まえて申請書に展開すればOKです。
しかし、中小企業の中には、
- そもそも事業計画を立てていない
- 事業計画は社長の頭の中にしかない
- 事業計画を何年間もアップデートしていない
というような企業もあることでしょう。
そのような企業は、ものづくり補助金の申請書作成を
自社の立ち位置や経営状況、今後の展望などを振り返る良いきっかけとして欲しいと思います。
資金計画を立てること
補助金は原則後払い方式
補助金が振り込まれるのは、完了報告などの手続きが終わってから1~2か月後になります、
そのため、事業にかかるすべての経費をいったん自社で立て替える必要があります。
補助金を受け取るまでの間に資金がショートしては元も子もありません。
そのため、補助事業にかかる経費の全額を運転資金とは別に準備しておく必要があります。
手元資金にものすごく余裕がある場合は自己資金で行っても構いませんが、
そうでなければ金融機関からのつなぎ融資を受けることを検討しましょう。
過去2期の経営状況を確認
ものづくり補助金では、添付資料として直近2期の決算書の提出が求められ、決算書の内容は審査対象となるものと考えられます。
審査項目(事業化面①)より抜粋
補助事業実施のための社内外の体制(人材、事務処理能力、専門的知見等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。
ポイントは以下の2つ
- 黒字か赤字か
- 債務超過に陥っていないか
決算は2期連続黒字で利益がしっかり出ている状況が理想です。
いっぽう、赤字だったとしても、赤字の理由が減価償却費の一括償却や大きな設備投資によって一時的なものである場合は、
一時的に赤字になった理由と今後の見通しをはっきり説明できていれば採択される可能性は十分あります。
逆に赤字であるにも関わらず、赤字の説明がないような場合は(事業計画が素晴らしくても)採択されないケースも多いようです。
また債務超過についても同様です。
債務超過の場合は赤字企業よりも金融機関からの資金調達が難しいことから、厳しいです。
私が補助金コンサルティングを引き受けて採択されなかった案件も、そのほとんどが債務超過(プラス赤字も)の企業です。
ただし、債務超過の企業であっても可能性がゼロというわけではありません。
現在、債務超過という企業は以下の3点を丁寧に説明しましょう。
- 過去にどういった経緯で債務超過に陥ったのか
- 直近は黒字になっているのか
- 金融機関からの借入見込みはあるのか
債務超過の会社でも、書き方次第では挽回できる可能性があります。挽回方法について以下の記事で解説しています。
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応募資格の確認
- 中小企業者に該当するか
- 補助金申請額が100万円以上であるか
- 50万円以上の設備投資を行うか
- 応募申請時点で補助事業を行う場所(事務所、工場、店舗など)を確保しているか
- 従業員の賃金上げを実施することは可能か
- 補助事業の全てを丸投げにする会社でないか
- 社会通念上不適切な会社でないか
中小企業者に該当するか
資本金または常勤の従業員数が下表の数字以下となる会社または個人を中小企業者と判定されます(資本金、従業員数のどっちか片方でOK)
常勤の従業員とは解雇予告を必要とする従業員のことです。通常は正社員のことと思ってOKです。
よくある勘違い
以下の3つは解雇予告を必要としないので従業員数に含めません。
ただし、役員やパート・アルバイトは働き方によっては解雇予告が必要となり従業員数に含める場合もあるので注意
- 役員
- パート・アルバイト
- 個人事業主(経営者本人)
したがって、
- 社長1人とアルバイト10人の小売店の場合、 → 従業員数は0人となり、小規模事業者に該当する
- 社長1人、正社員3人、アルバイト7人の小売店の場合、 → 従業員数は3人となり、小規模事業者に該当する
- 社長1人、正社員7人、アルバイト3人の小売店の場合、 → 従業員数は7人となり、小規模事業者に該当しない
となります。
補助金申請額が100万円以上であるか
ルール上、補助金申請額が100万円を下まわる申請は認められていません。
申請額が100万円を下まわるということは、
つまり、補助対象経費が
- 200万円以下(中小企業の場合)
- 150万円以下(小規模事業者の場合)
ということを意味します。
50万円以上の設備投資を行うか
こちらも同様にものづくり補助金のルールです。
50万円以上の設備投資を行うということは、50万円以上の「機械装置費・システム構築費」を計上しているということになります。
応募申請時点で補助事業を行う場所(事務所、工場、店舗など)を確保しているか
新工場の立ち上げに伴う設備導入費用にものづくり補助金を活用するということは考えうることですが、まだ建屋の工事が完成していないというようなケースは申請できないようです。土地だけ購入して建屋の建築はまだという場合も同様です。
したがって、補助事業実施場所が事業拠点としてまだ立ち上がっていない場合は今回の申請は断念せざるを得ません。
なお、募集要項には、
補助事業の実施場所が自社の所有地でない場合、賃借契約書等により使用権が明確であることが必要です。
と記載されています。
従業員の賃金上げを実施することは可能か
ものづくり補助金では賃上げを行うことが要件として盛り込まれています。
賃上げとは、
- 給与支給総額を年平均1.5%増加させること
- 事業場内最低賃金を地域別最低賃金(都道府県で定められている最低賃金)に対して+30円とすること
とされています。
給与支給総額の増加とは、
- 従業員の給与をアップする
- 新たに従業員を雇い入れる
のいずれか(または両方)の方法で達成可能ですので、必ずしも全員の基本給をアップさせる必要はありません。
補助事業の全てを丸投げにする会社でないか
補助事業の全てを丸投げにするとは、つまり自社は企画構想だけを行って、実際の設計・開発・製造などを全て外注にするという意味です。
社会通念上不適切な会社でないか
ここはわざわざ説明しなくても分かると思いますので、説明を割愛します。
経費が補助対象になり得るか
補助対象になると思われがちですが、対象外となる代表例3つを紹介します。
- 既に経費を支払い済み、または発注済の経費
- 汎用性の高いもの(パソコン、複合機、自動車など)に対する経費
- 人件費
補助対象外となる経費が他にもありますので、募集要項で確認しておきましょう。
ちなみに補助対象経費の考え方については、以下の記事で解説しています。
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採択の見込みがありそうかどうか
以下のようなケースに該当する場合、申請テーマの内容によらず採択は厳しい印象です(可能性はないというわけではありません)。
- 財務状況が悪い(2期連続赤字、債務超過)
- 会社の事業規模に対して事業にかかる予算がはるかに大きい
- 取り組み内容に対して明らかに人的リソースが少ない(社員1~2名の会社は要注意)
- 自社WEBサイトに書いてある内容と申請書に書いてある内容のギャップが激しい
上記はすべて申請時点で動かしようのない事実なので、事実を変えることはできません。
しかし、書き方を工夫することで挽回できることもあります。
加点を受けられそうかどうか
ものづくり補助金の審査では、特定のケースに該当する場合は、加点・減点を行っています。
加点項目は以下のとおり。
- 成長性加点
- 政策加点
- 災害等加点
- 賃上げ加点
逆に減点項目は以下のとおりです。
- 過去3年以内にものづくり補助金を受けた実績がある
加点項目と減点項目の内容は毎年微妙に変わりますので、最新の公募要領でチェックしておきましょう。
最後に
ものづくり補助金に申請しようかどうか迷っている方、これから申請準備をはじめようという方のために
補助金申請に入る前の事前準備として確認・検討しておくべき7つの項目を解説しました。
- 自社の事業計画を振り返ること
- 資金計画を立てること
- 過去2期の経営状況を確認
- 応募資格の確認
- 経費が補助対象になり得るか
- 採択の見込みはありそうか
- 加点を受けられそうかどうか
赤字・債務超過の企業にとっては、やや厳しいかもしれませんが、事業計画の内容次第でリカバリーできるかもしれませんので、
前向きな気持ちで頑張っていただきたいです。
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